FE88-Solを使ったスピーカー製作
連休中に、手持ちのものでスピーカーシステムを一つでっち上げました。
コンセプトは、「FE88-Solをネットワークレスで使う。しかし低音は欲しい」です。
そうなると、バックロードホーンがありますが、個人的にはバックロードホーンの正確でない低音は好きではありません。他に方法はないでしょうか?
他の方法でFE88-Solをネットワークレスで使うなら、適当な小型バスレフ箱を使い低音は妥協することですが、それだと面白みがありませんし、結局は使わなくなります。
そこで、FE88-Solに低域を任せることは諦め、ウーファーを足すことにしました。まあ、そこにメインシステムで使わなくなった余っていたウーファーがあったからですが。
FE88-Solは1Lの密閉箱にして、余っていたEton 7-300/A8/32 HEX(15L バスレフ箱)をウーファーに使います。ウーファーはコイル1発で切ります。Win ISDでのシミュレーション結果は以下のようになります。FE88-Solは200Hz以下はダラ下がりでうまい具合に下がっていきます。ウーファーは180Hzクロスくらいで切るとうまく繋がりそうです。大体6,8mHほどのコイルでしょうか。
1Lの密閉箱を作るくらいの端材はあったので、木を切るところからはじめて組み立ててみました。プロに任せるときちんと直角が出るのですが、素人がやるとこの程度の大きさの直角もなかなかうまく出ません。どうにも不格好な箱になってしまいしましたが、接着剤を流し込んで隙間を埋め、一応密閉箱として動作するようにはしました。
コイルは6.8mHのものがなかったので、3.6mHで代用しました。とりあえず、中高域をカットする程度です。これだとクロスが大体320Hzなので、200Hz台が若干膨らみますが、まあこの程度の膨らみならば量感としてプラスされるでしょう。
で、出来上がった写真が以下のものです。コイルは外付け、正面以外から写すとFE88-Solの箱の不格好さが際立ってしまうので、正面写真だけで許してください。
音は、なかなか良いです。一聴して活きと勢いの良さを感じさせてくれるのは、ネットワークレスのフルレンジユニットだからでしょう。ボーカルの伸びの良さが印象的です。ジャズも活きの良さでうまく鳴らしてくれます。
一方、高域は一応伸びているし頑張ってはいるものの質的にはやはりフルレンジユニットの高域と言う感じで、クラシックの弦などはあまり得意ではありません。もっとも、これの対抗システムとなるサブスピーカーはScan-Speak 15W8530K00 + D3004/6640という構成なので、高域で負けるのは仕方ないことです。高級ツィーターユニットにはかないませんが、下手なツィーターよりはまし、というところでしょうか。
低域もきちんとしたウーファーを使っているので不満はありません。もう少し下まで伸びていたら言うことありませんが、それはこの小型スピーカーに望むことではありません。ただ、少しドスが効いたように聞こえるのは、ウーファーとFE88-Solの帯域が若干かぶっているからでしょうか。ネットワークはやはり見直しが必要なようです。
結果として、Scan-Speakのユニットを使ったサブスピーカーとは全く異なるキャラクターのスピーカーとなりました。これなら2つのスピーカーを並行して使っていくことも可能でしょう。ネットワークをもう少し詰めていく事が今後の課題でしょうが、全体としては余り物でうまく作ることができたスピーカーとなりました。
PC-Volumio
Volumioは色々なプラットフォーム(その殆どはワンボードPCですが)で動作するよう各種ボードにチューニングされたものが幾つも出ています。その中には、x86/x64系PC、要は普通のWindows PCで動くバージョンもあります。今回はこれがテーマです。
PCはAsrockのAM1H-ITXというマザーボードにAPUをAthlon 5350、メモリ4GBを積んだものを使用しました。
Volumioのインストールは、SDカードに書き込むのと同様にしてUSBメモリにイメージを書き込みます。そして、UEFI(BIOS)画面からUSBメモリで立ち上がるようにPCを設定して、USBメモリから立ち上げます。このとき、HDDもSSDも当然要らないので、取り外してしまい、マザーボードだけで立ち上げるようにします。
AM1H-ITXは面白いマザーボードで、普通にATX電源から電源を供給することもできますが、19VのACアダプターから単電源で立ち上げることも出来ます。そのため、リニア電源を作りやすいというメリットがあります。しかし、今回はACアダプタで立ち上げました。電源作成は今後の課題です。
Athlon 5350は2.0GHzのクアッドコアでTDP25W、リテールのクーラーでもファンの音は余り気になりません。それにメモリ4GBを積んでいますから、ラズパイよりはさすがに高性能です。
DACとは、Amaneroから同軸S/PDIF出力で接続しました。音もスペックの余裕からか、かなりラズパイよりは良くなります。澄んだ感じがして、しかも重心は低くなります。
今後は、このPCでしっかりした電源を使って鳴らすことと、より高性能なPCで動かした場合に音はどうなるかを試してみたいと考えています。
ASRock マザーボード AMD Athlon Sempron(Kabiniコア) ハイエンド AM1 Mini-ITX DispalyPort AM1H-ITX
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Quad44のBASS LIFTの卑怯さ
既に前々回のサブスピーカー話で、Quad44のBASS LIFTは良く効くと書きましたが、どの程度効くものか、測定結果を見てみましょう。
まずは、素の特性です。
120Hz付近にディップがあってわかり辛いですが、大体100Hzくらいからだら下がりの特性となります。小型密閉だから普通はこんなものです。これでも、30Hzで-10dB程度ですから、それなりに伸びてはいることもわかります。
それが、Quad44のBASS LIFTを1レベル上げるとこうなります。
既に前々回に出した図ですが、相変わらず小型スピーカーとは思えない特性となります。30Hzまでほぼフラット、25Hzまで出ていると言ってもいいような特性です。
それというのも、BASS LIFTを1レベル上げると、100Hzから上がり始めて20Hzで+10dBという猛烈なレベルで低域を持ち上げてくれるのです。100Hzからだら下がりのサブスピーカーに丁度合ったというところでしょう。ちなみに、Quad44のBASS LIFTは3段階あり、最大の3レベルでは40Hzをピークに+16dBと危険なくらいに低域を持ち上げてくれます。まったく、たった1レベル動かすだけでこうなるのですから、卑怯だぁ、と思わず叫びたくなるくらいです。
さて、卑怯具合がどれくらいなのかは、メインシステムのスピーカーと比べてみましょう。以下がそれになります。
相変わらず、120Hz付近にディップがありますが、これはメインスピーカーを置いている部屋とサブスピーカーを置いている部屋の大きさが7畳と6畳でほぼ同じだからでしょう。
これを見ると、まあ35Hzくらいまでは鳴っているという感じでしょうか。それでも普通のスピーカーとしてみると立派なものです。
尋常でないのは、Quad44のBASS LIFTなのです。そのおかげで、メインスピーカーよりもサブスピーカーの方が低域が伸びていることになってしまいました。卑怯なのはQuad44なのです。バスレフなどでは、こうも巧く効くことはないのでしょうが、小型密閉スピーカーということで、実に巧みにQuad44のBASS LIFTが効くのです。
まったくもって、こうした次第でQuad44はサブシステムから外すことができなくなりました。困ったものです。
Raspberry Pi 3B と ASUS Thinker Board と Volumio
1ボードコンピューターは最近、雨後の筍のように色々なものがでていますが、その中でもやはりRaspberry Piが優位を保っているようです。
そうしたRaspberry Piに対して、GPIOのpin互換とコネクタ位置などを揃えることで、Raspberry Piの周辺機器を使えるようにしようと考えるところが出てきても不思議ではありません。
そして、実際にそれをやったのが、ASUS Tinker Boardです。スペックをRaspberry Pi 3Bよりも高くして、GPIOpin互換と外形をそっくりにしています。
スペックはCPUやメモリなどで高くなっていますが、注目するべきはメモリと通信チップ周りでしょう。
メモリは2GBとRaspberry Pi 3Bの倍、通信チップはLANチップとUSBチップを分けて、相互干渉しないようになっています。LANチップはきちんとGbit LAN対応です。それに対して、Raspberry Pi 3Bでは、LANとUSBを一つのチップで処理しているため、LANは遅く、相互干渉によると思われる悪影響が感じられることがありました。
そして、この二点は新しく出たRaspberry Pi 3B+でも解消できていません。
とはいえ、Raspberry Piを使っているのもネットワークオーディオのためであるので、Tinker Boardがこの用途に使えなければ、如何に高性能であっても私の興味は惹かなかったでしょう。
ところが、VolumioがTinker Boardに対応してきました。本家のRaspberry Piほど更新頻度は多くありませんが、それでも現在は、Raspberry Piがver.2.378に対して、Tinker Boardはver.2.349です。
こうなるとTinker BoardとRaspberry Pi 3Bを比較したくなります。で、比較してみました。
OSはVolumioのそれぞれの最新版を使用、DACにはI2S DACを使用しての比較です。GPIOpin互換ですから、Raspberry PiのI2S DACがTinker Boardでもそのまま使えます。
結果はOSのバージョンが若干古いにも関わらず、Tinker Boardの圧勝でした。出てくる音は重心が低く安定していて、細かい音もよく出るのでステレオイメージも広いものでした。
問題はお値段が若干高めですが、それでも1万円程度です。オーディオ機器として考えると、相変わらず格安です。新しく出たRaspberry Pi 3B+を買うよりも、こちらの方が費用対効果は高いだろうと思います。
ASUS TInker Boardはお薦めです。
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- 出版社/メーカー: TechShare Inc.
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サブシステムのスピーカー
サブシステムのスピーカーは自作です。
ウーファーにScan-Speak, 15W8530K00、ツィーターに同じくScan-Speak, D3005/6640を使っています。
箱はフィンランドバーチ合板18mmを使った密閉箱で、Q=0.7となるよう設計してあります。吸音材は軽く充填。
ネットワークの設計には苦労しました。最終的には、2.5kHz2次のクロスでウーファーにインピーダンス補正を入れるという割と平凡な形に収まりましたが、そうなるまで、いくつかのクロスを試しては駄目という試行錯誤を繰り返してきました。
結果的には以下のような特性となりました。Quad44のBASS LIFTを1レベルあげての補正後です。120Hz付近のディップは部屋の特性によるものですが、それ以外はほぼ±3dB以内に収まっている優秀な特性です。
音もユニットの優秀さを活かしたものとなりました。また、Quad44で補正して30Hzから無理やり出る小型スピーカーとして聴くと、小型スピーカーらしいステレオイメージの良さと大型機のスケール感が疑似的にとはいえ両立していて、実に面白い鳴り方をします。
まずは満足できる出来栄えで、サブシステムのスピーカーとして元気に鳴っています。
Quad44のメンテナンス等
サブシステムで使っているQuad44のメンテナンスを行いました。
Quad44も初期型が登場してから、既に40年近くが経過しています。さすがに、リキャップ等のメンテナンスをしなければならないと思い、実施しました。
メンテナンス情報はDada Electronicsから得ました。ファイルのダウンロードには登録が必要となりますが、これはシリアルナンバーからメンテナンス部品が示されているため、非常に便利なものです。
Dada Electronicsのファイルにはケミコンの交換だけが示されていますが、更に念のためにタンタルコンデンサも交換しました。
これらのケミコンとタンタルコンデンサは、千石電商で入手できるものを使用しました。
ー電源部のメンテンナンス
電源部を開けて、内部の電源スイッチとスパークキラーを交換しました。電源スイッチは若松通商で売っているSS-13、スパークキラーはマルツで売っているものを使用しました。
-リレーとロジックスイッチの交換
そうそう壊れるところではありませんが、安いものなので予防措置として交換しました。
リレーはG5V-2-12V, ロジックスイッチはTC74HC4066AP、リレーはマルツ、ロジックスイッチはRS onlineで購入しました。
-オペアンプの交換
オペアンプは、Dada Electronicsでは、初期型ではOPA604またはLME49710を勧めていますが、個人的にはこの選択はよろしくありません。確かに音は良くなりますが、Quadの音ではなくなってしまう感じです。
初期型ではTL071の代わりにTLE2071、後期型ではTL072の代わりにTLE2072を勧めます。TLE2071はデータシートに、"Direct Upgrades to TL05x, TL07x, and
TL08x BiFET Operational Amplifiers"と書いてあるTL071の正統な上位互換機種なのです。特性は良くなり、音も誇張がなくちょっと大人しいけれど自然な音がします。わたしの抱いているQuadの音に近いものです。これはRS onlineから買えます。
これで、一通りメンテが終わりますが、最後にジャンパーなどの半田部分をチェックしましょう。やに入り半田を使っているため経年劣化が起きている可能性があります。断線などないかきちんとチェックします。
以上を行えば、今後もストレスなくQuad44を使い続けることができるでしょう。