とのじの迷宮

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フォノ・カートリッジの話 - Shure M44GとDenon DL-103R その1

 アナログ・レコードを聴くためには、良いフォノ・カートリッジが欠かせません。

 数千円で買えるものから数十万円もする高価なカートリッジまで、非常に価格に幅がありますが、今回はその中でも、廉価で歴史のある二つのカートリッジについて書いていきたいと思います。

 まず、Shure M44G。

 このカートリッジは、その耐久性ゆえに現在ではクラブ・DJ用として売られていますが、この五千円ほどで買えるカートリッジ、環境を整えてやると実に良い音で鳴ってくれます。

 M44GはM44-7の軽針圧化改良版ですが、M44Gは1963年発売ですので基本設計は50年以上昔となります。当初はDJ用などではなく、きちんとしたHi-Fi用途の製品として開発されました。そして、レコード会社の検聴用カートリッジとしても使われたりしました。

 再生時にまず注意する点を挙げるならば、負荷容量が450pFと高いことです。これは現在のMMカートリッジよりも3-4倍高い値なので、負荷容量を変更できないフォノ・イコライザーに繋げると、高域が暴れたりします。M44Gの高域が粗いとの評価には、不適切な負荷容量で聴かれることが多い事が一つの原因としてあるかと思います。

 さて、適切な負荷容量のフォノ・イコライザーに繋げられても、それでM44Gの真価を発揮できるわけではありません。ターンテーブルとトーンアームとの相性があります。それは、意外なほど大きなものです。

 基本的に、M44が開発された当時のものを使うのが一番です。具体的にあげるならば、ターンテーブルはThorens Td124かGarrad 301、トーンアームはSME 3009/S2か3012/S2あたりとなります。シェルはもちろんSME S-2シェルで決まりです。

 これらを揃え、きちんと調整されたM44Gは、レンジは若干狭いながらもニュアンス豊かな音で音楽を奏でてくれます。クラシックの弦も当然良く鳴り、古き良き時代の巨匠たちのオーケストラ音楽を実によく再現してくれます。

 ちなみに、ターンテーブルはTd124のみでしたが、他のトーンアームでも試してみました。SME 3009/S2imp.とFR-64fxです。これらのアームでは、微妙なニュアンスは減退し、ジャズを勢いよく鳴らすのに向くようになる感じでした。このカートリッジが使われる事の多いであろうTechnics SL-1200シリーズでは、この傾向が更に進んで、クラブ向けの乾いた割り切りの良い音になるのかな、と感じました。

 ちなみに、このカートリッジ、安くて良いのですが品質にばらつきがあるようで、何個か買って選別することをお勧めします。

 ちょっと、長くなったので今回はここまで。DL-103Rについてはまた次回、とします。

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【国内正規品】 SHURE  N44G カートリッジ用交換針

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